2013年06月19日

東京大学 藤本徹先生に聞く!ゲームと学習に関する研究プラットフォーム ”LudixLab”とは?

ゲームまたはゲームの仕組みを使った学習に関しては、これまで「エデュテイメント」、「シリアスゲーム」、「ゲーミフィケーション」などの呼び名で展開されてきましたが、この分野の研究コミュニティ、学術研究基盤というのは殆どありませんでした。
Ludix Lab(ルディックス・ラボ)は、ゲームと学習に関する研究・開発・実践を推進するために2013年1月に設立された研究ユニットです。
今回、LudixLabの立ち上げ・運営を行われており、書籍「シリアスゲーム 教育・社会に役立つゲーム」等の著者でもある、東京大学 大学総合教育研究センターの藤本徹先生に現在のLudixLabでの活動、目的、将来的な展望についてお話を伺いました。

藤本徹先生(Twitter:@tfujimt)は、民間企業を経てペンシルバニア州立大学博士課程修了後、ゲームの教育的利用や社会的応用の研究、シリアスゲーム開発者教育に従事されています。
また、東京大学総合教育研究センター助教としてのご活動に加え、東京工芸大学芸術学部ゲーム学科では「シリアスゲーム論」の講義を担当されています。
著書には「シリアスゲーム(東京電機大学出版)」、訳書にジェイン・マクゴニガル著「幸せな未来は『ゲーム』が創る(早川書房)」、マークブレンスキー著「テレビゲーム教育論(東京電機大学出版)」「デジタルゲーム学習(同)」があります。


著書「シリアスゲーム」はシリアスゲームについて体系的にまとめられた日本の書籍としてはほぼ唯一。


ゲームと学習に関するコミュニティを形成するLudix Labとは?

――まず、LudixLab立ち上げの背景について教えてください。

藤本(以下、敬称略)
 ゲームと学習、シリアスゲーム、ゲーミフィケーションといったフィールドの研究者、また関心のある企業やユーザーに対し、「ここに来れば相談できるよ」というようなコミュニティを形成したかったという思いがあり、LudixLabの設立に至りました。新しくゲームを使ったプロジェクトを行いたい、という方々が第一歩を踏み出せるような相談機能や人をつなげる機能を持てたらいいなと。
例えば企業と企業だと繋がりにくいところを、学の分野で絡む事によってつながりやすく、また学術的にも意義のあるプロジェクトにするといった支援やプロジェクト形成を行っていきたいと思います。

――「ゲームを用いた教育」を研究している機関はどのくらいあるのでしょうか。

藤本
 そういった活動は立命館大学のゲーム研究センターや九州大学などでも行われていますが、まだまだ日本では数は多くありません。シリアスゲームや「ゲームと教育」というテーマに絞ってみると、関東には実質研究室レベル以上の規模の活動拠点がなかったことも、今回立ち上げに至った背景です。より広範な大学間連携や産学官連携をするためにも拠点作りは重要です。
活動としては、例えば2月は「もじぴったん」元プロデューサーで現在は神奈川工科大学特任准教授の中村隆之さんを講師としてお招きし、「デジタルゲームの面白さ分析ワークショップ」を行いました。
(上記ワークショップの様子は、こちらこちらを参照)

小規模なプロジェクトから育てていきたい

――LudixLabで、具体的なプロダクトを作っていこうという話もあるのでしょうか。

藤本
 あります。もともと、そのような問い合わせはきていたのですが、大学の研究者個人では受けづらいし、大学で受けようとすると規模が限定されてしまいます。LudixLabでは、もう少し小規模なプロジェクト、またはその準備の段階から一緒に育てていけるような機能を持ちたいと考えています。
例えばあるテーマでゲームを使った問題解決を考えている方と、ゲームを作りたいと思っている方とをつなげて、ワークショップを通じて出てきたアイデアをフィードバックすることなどを通じ、プロジェクトに取り組んでいきたいと思います。
これまでに、学習アプリの開発会社や教育会社のアプリ開発の相談、監修などで関わらせていただきましたし、他にも様々な連携の可能性はあるでしょう。

(参考)藤本先生が参画するGlobal math

global-math-guide

Global mathは、数学・算数を題材とし、教育シリアスゲームの評価プラットフォームを確立しようという試み。
学習ゲームをプレイ中に所要時間や手順の正確さなどの評価指標となるデータをデータベースに蓄積し、学習支援の調整に利用することができるAPIを開発している。
東京大学やベネッセなどが連携して行う産学連携プロジェクトで、ゲームは2014年3月まで無料で利用できる。
別設されているサイトでは、APIを使用したゲームを実際にプレイできる。

――個人の開発者や、アイデアを実現させていきたい方もターゲットになるわけですね。

藤本
 もちろんです。そういった方々を可能な限り応援したいと思っています。なかなか学習ゲームを作りたいと思ってもそこに入り込むのは大変なので、その支援が必要だと思います。ゲームを作りたいという方は、ワークショップに出ていただくことで自分のアイデアをブラッシュアップできると思います。そういった教育の場の提供、プロジェクトのプロデュースやコーディネーションに加えて、それに寄与するような研究を行っていきたいと考えています。

――これからのご活動の展望を教えてください。

藤本
 セミナーやワークショップによる教育の場作りの次の段階としてですが、研究機能を高めるときに一緒にやってくれる研究者のネットワークを活かしたいと思います。また、ビジネスプロデュースや事業化を考えるときには、それを真剣に考えてくれるような方、コンテンツの流通の手段を持っている方を巻き込んでいければと考えています。

――ご活動の状況はどのようなところで見られますか?

藤本
 Facebookページを設置しているほか、シリアスゲームジャパンのページ私のブログなどで発信をしています。
セミナーやワークショップの情報、ゲームを使った教育への取り組みについて紹介をしています。

――ありがとうございました。

藤本先生は、もともと学校で教えられている教育の手法に関心があり、教育研究の分野に進んだとのこと。
「Age Of EmpireⅡ」をプレイされている時に、漠然と「うまく歴史の要素も盛り込んでいるし、こうやって夢中になり、マルチタスクで様々なことをやって行くことが推進できるようなテクノロジーを取り込んだ学習環境はできないか」という問題意識があったといいます。

米国では藤本先生が留学中の2000年代にちょうどシリアスゲームへの関心が高まり、シリアスゲーム・イニシアチブという非営利研究コミュニティが設立され、2004年にはGame Developers Conference(GDC)において、初の「シリアスゲームサミット」が開催されるなどの動きがありました。藤本先生はその動きをちょうど留学中に目の当たりにし、帰国後、シリアスゲームの普及活動を推進することになります。
2004年から継続してシリアスゲームの日本における普及活動を推進している藤本先生が立ち上げたLudixLabの活動に、今後も注目していきたいと思います。

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