2014年08月17日

シリアスゲームジャムにおける制作のTipsと、完成した『Riddles in Pieces』について

2014年2月に行われた「シリアスゲームジャム」。
ゲームクリエイターの岸本好弘さんの主催ということで人気が集まったこのイベントですが、このイベントで最高得点を取ったチームがありました。

『Riddles in Pieces』。英語をテーマとした、非常に本格的なシリアスゲームです。

今回はその企画・制作チームの一員であり、他のシリアスゲーム作品の制作者としても知られる浅見智子さんに、シリアスゲームジャムの参加レポート、そして、シリアスゲームを作るにはどうすればいいのか?というTipsを寄稿いただきました。

最後には実際にゲームが楽しめるリンクもありますので、どうぞお見逃しなく!

はじめに

2014年2月22日(土)~23日(日)にかけて、日本初(世界初?)となるシリアスゲームジャムが開催されました。

そもそもシリアスゲームとは、娯楽以外にも教育や社会に役に立つゲームのことで、ゲームをプレイすることで医療や教育、政治など様々なジャンルへの興味関心が湧いたり、その分野について学んだりすることが出来ます。エンターテインメント用に開発された『信長の野望』で日本の歴史が学べた、というのも広い意味ではシリアスゲームと呼ぶことができます。

今回行われたシリアスゲームジャムは、有志が一か所に集い、2日間でシリアスゲームを作ってしまおうという、色々とすごいイベントです。

ゲームジャムの公式HPはこちら
http://www2.teu.ac.jp/media/~kishimotoy/SeriousGameJam/

シリアスゲームジャム第一回目となる今回のテーマは、”Game Jam for Happy English”。ゲームを通じて、何らかの英語学習ができるようなシリアスゲームを開発することが今回のシリアスゲームジャムの課題設定です。

このレポートでは、まずシリアスゲームジャムの流れをご紹介し、次に実際にゲームを作る中で重要だと感じた部分についてご紹介していきたいと思います。

シリアスゲームジャムの流れ

参加~当日までの準備編
私はこのイベントをFacebookで知って興味を持っていたのですが、シリアスゲームという限定されたジャンルにもかかわらず、40人の定員がわずか1週間程度で締切になりそうになり、慌てて申し込みました。主催者の岸本好弘先生は元ナムコのゲームクリエイターで『ファミスタ』の父として知られており、このあたりの影響力の大きさかもしれません。ゲームクリエイターの主催するシリアスゲームという事で、本気のゲームが出来るのでは、と期待も高まりました。

参加者が揃った時点で、参加者によるシリアスゲームの企画コンペがFacebook上で開催されました。ここで、私が提出したのが『Riddles in Pieces』という英文の並び替えによってヒントが浮かび上がる脱出ゲームです。それに「少女に”Find Betty.(ベティを見つけて)”と言われて家に閉じ込められる」
という謎めいたストーリー性を持たせました

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『Riddles in Pieces』企画(コンペに提出したもの)

投票の結果、『Riddles in Pieces』はありがたいことに36企画中最高点を頂き、無事制作が決定しました。その後、制作ゲームのチームメンバーが決定され、次のようなメンバー構成となりました。

企画チーム3名(会社員(筆者),英語教師, 学生各1名)
プログラムチーム2名(プログラマー2名)
グラフィックチーム3名(学生3名)

メンバーはゲーム開発に何らかの形で関わった事のある人が多かったですが、それ以外にも多様なメンバーが集まっており、シリアスゲームのすそ野の広さを感じました。

普通のゲームジャムは事前準備をせずに、当日チーム編成を行いその場で企画を考えるようですが、今回のシリアスゲームジャムは、開催時間が短い上に学習についても考える必要があるため、事前準備が推奨されていました。さらに『Riddles in Pieces』は脱出ゲームという特性上、絵やテキスト等の素材が多いため、事前に出来るだけ作成しておくことにしました。

具体的には、企画リーダーが仕様書や素材リストを作成し、それを元にグラフィックの方には背景やアイコン素材、企画の方には謎解きの仕掛けやストーリー展開、英語教師の方には中学程度の英文問題と解説、プログラムの方には技術的なテストを行って頂きました。出会って間もないにも関わらず、メンバーの方々のご協力の元、見事前日までに最初のステージに必要な素材は完成し、あとは当日を待つのみとなりました。

シリアスゲームジャム当日
当日は朝9時半に六本木ヒルズに集合し、会場へ。席はチームごとに分かれており、広い会場に学生・社会人含め50人ほどの人が集まりました。最初にシリアスゲームの研究者である藤本徹先生より基調講演があり、その後各チームの制作予定作品の発表を経て、お昼近くからようやくゲーム制作開始となりました。進め方と自分の担当まで決まったら、あとは黙々と作るのみ…!

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作業風景(後ろに立っているのは岸本先生)

走り出しは一見順調そうに見えたのですが、そうは簡単にいかないのがゲーム制作。並び替えの仕組みが技術的に難しく、試行錯誤となりました。また、企画リーダーが仕様書を書き慣れておらず、仕様を見てもプログラマーさんがどう動かせばよいか分からない、など色々と問題が発覚し、予定スケジュールは大幅に遅延しました。
それでも作成した絵やアイコンがプログラム上で動くと「おおー!」という歓声が挙がり、ゲームを作っていると実感できて、メンバーのテンションが一気に上がりました。このゲームジャムでは学生・社会人の区別なく、分かる人が教え、出来た成果を皆で称賛しあう雰囲気があり、一つのゲームを皆の力を合わせて作るという醍醐味を感じることができました。
結局2日目の終了時間までに、タイトル画面から最初のステージの並び替え問題を解ける所までは入れることが出来ましたが、最後のステージまでは間に合いませんでした。折角素材は作ったのだし、完成まで続けるぞ!という強い思いが芽生えた最終発表となりました。

ゲームジャム後は作業可能な人で、当日入れられなかった残りステージの実装や、不足素材の作成をこつこつと行い、約3ヶ月後に正式に完成しました。出来上がってみると企画書で想定していた内容はもちろんの事、それ以上の細かな工夫(モバイル対応等)が入っており、企画リーダーの自分が当初想像していたゲームを超えた作品に仕上がりました。これもひとえに各メンバーがRiddlesを「自分のゲーム」と捉えて、こだわりを持って制作して下さったからだと思います。

シリアスゲームジャムのTIPS

今回シリアスゲームに参加して、重要だと感じたポイントを書き出してみました。あくまで個人目線からのアドバイスになりますが、今後こうしたゲームジャムに参加する人の参考になれば幸いです。

1.企画の際に考えておくこと
シリアスゲームの企画の際に絶対に考える必要があるのは、

「1.このゲームのどこが面白いのか」
「2.このゲームで、どんな人が何を学べるのか」
「3.なぜそれを学ぶ必要があるのか、それを学ぶとどんな良い効果があるのか」

という事ではないでしょうか。特に3は、なかなか考えにくい部分かもしれません。しかし、シリアスゲームをプレイする人たちは、単に面白そうだからプレイする人だけとは限りません。「なぜそれを学ぶ必要があるのか」を考えることは、何かしら効果を期待してプレイする人や一般社会にPR出来るだけでなく、そのシリアスゲームの存在意義を考えることにもなるため、じっくり考えておいて損はありません。

2.ゲーム中に学習要素を取り込む方法
いかにゲーム中に上手く学習要素を取り入れるかを考えるのは、シリアスゲームデザインの醍醐味です。ここで重要なのは、ゲームのゴールと学習のゴールを一緒に考えない事でしょう。例えば体力づくりを目的にサッカーをする時、体力が十分ついたからといってサッカーの試合が終了する訳ではありません。サッカーのゴールはあくまでも制限時間内に相手より点を多く取ることです。同様に、学習効果が十分に出たらゲームが終了するようなデザインは、ゲームとしてはナンセンスだと言えます。
学習とゲームのバランスは、ゲームクリアの手段として学習効果が得られる行動を取り入れるようにすると、考えやすくなります。例えばサッカーでは、以下のようになります。

(手段)ゲーム中必死にボールを追いかける
(効果)自然と体力が身につく

このように、「体力をつける」ということはサッカーというゲームの目的ではありませんが、サッカーを楽しんでいると、自然に体力がつくという効果が得られるわけです。同様に、今回の『Riddles in Pieces』では、ゲームのゴールは部屋からの脱出ですが、その手段として英語の並び替えがあります。部屋から脱出するというゲームの手段として、英語を並び替えるシステムを採用することで、プレイヤーがゲームを楽しみつつ自然と英語に触れる事を狙っています。

ゲーム中に学習要素を取り入れる際に気をつけるべきもう1つのポイントは、手段がゲームの世界とマッチしている事です。例えば『Riddles in Pieces』では、英語の問題は家の人が残したと思われる、バラバラになったメモという形で提示されます。それをプレイヤーが発見し、脱出の際のヒントになりそうだ、という雰囲気になって並び替え画面に移行します。もし、ゲームの途中で何の脈絡もなく並び替えのクイズが開始すれば、プレイヤーは何のために英語の問題をしているのか分からず、フラストレーションが溜まってしまうでしょう。プレイヤーがやることは結局同じ英語の並び替えですが、この「手段とゲームの世界とを自然に結びつける部分」は、シリアスゲームをデザインする際はよく練っておく必要があると思います。

3.開発時に起きた問題事例と対策
こちらでは、『Riddles in Pieces』の開発時に起きた問題を教訓に、事前に気をつけるべき部分について取り上げます。当たり前の事だらけですが、ゲーム制作に慣れていない人は参考になるかもしれません。

(問題1)「ゲームのイメージにあった形で」と背景画像とアイコン画像を別々の人にお願いしたら、見事に両方とも同じようなテイストになったが、ゲーム画面に配置したらアイコンが背景に馴染んで、どこにアイコンがあるか分からなくなってしまった。
(教訓)全体画面を司るアートディレクターを1人用意すべし。

(問題2)「どれを押したらこういう変化が起きる」という動作仕様が文書化されておらず、時間の無いゲームジャム中にプログラマーが企画者に都度確認する事となり、非効率だった。
(対策)動作仕様書は事前に作成し、プログラマーとも認識を合わせておくべし。

最後に

ここまでお読み頂き、どうもありがとうございました。シリアスゲームジャムの参加レポートと、シリアスゲーム制作時のTIPSはいかがでしたでしょうか。この記事が、今後シリアスゲーム制作を目指す方々に少しでもお役に立てれば幸いです。また、今回制作した『Riddles in Pieces』の方もオンラインで公開されていますので、是非楽しんで頂ければ幸いです。

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ゲームURL(PCもしくはタブレットのChromeまたはSafariでアクセスしてください):http://gakuya-game.jp/rip/

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